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Canonのミラーレス一眼におすすめのレンズとは?プロが明かす選び方の基準

目次


    SONY、Nikonとともにカメラ好きから愛されるブランドといえば、Canon。近年は、ミラーレスカメラにも注力し、その高い性能については、カメラ愛好家からも高い評価を受け、注目度も増している。ビギナーおよび一般ユーザー向けのボディについては、前回お届けし、今回紹介するのは、「Canonのミラーレス一眼カメラにおすすめのレンズ」。解説してくれたのは、前回同様プロカメラマンの依田さん。「一眼だからこそ、マニュアル操作でレンズを使ってほしい」と熱く語るプロおすすめのレンズとは?

    依田 裕章(Hiroaki Yoda)
    プロのバイクレーサーなどを経て、2003年からフォトグラファーとしてキャリアを開始。広告、雑誌、企業案件ほか2008年からはパラリンピック、2013年からVリーグなど、スポーツからビジネスまで幅広い分野で活動中。夏季・冬季ともにパラリンピックに同行し、陸上競技場から雪山まで、あらゆる条件下で撮影を行ってきた。ロケ撮影からスタジオワークまでこなし、豊富な経験と深い知識を持つ ( fwyxf366@gmail.com / instagram @ hiro_yoda )

    広角レンズで撮影したパリのエッフェル塔。広角ならではの1枚となっている

    レンズは望遠と単焦点1本ずつ購入するのが理想。望遠はあらゆる被写体に対応


    前回、「プロカメラマンが教える!ビギナー向け、おすすめのCanonミラーレス一眼」で多くの質問に答えてくれたプロカメラマンの依田裕章さん。雑誌や広告、企業案件からパラリンピックやVリーグなどのスポーツまで幅広い分野で活躍し、スタジオワークから雪山での撮影までこなす深い知見を有している。スポーツの世界では望遠レンズは不可欠であり、一方で単焦点レンズも欠かせないと語るプロはどのような理由でレンズを選んでいるのか? レンズの”深いい話”を聞いた。

    –レンズは基本的に何を使うのがいいと思いますか
     望遠と単焦点1本ずつあるのが理想です。私は現在RF70-200mm F2.8(実勢価格約35万円)、RF50mm F1.8(実勢価格約3万円)を好んで使っています。

    –なぜその2本を選んだのでしょうか
     2本とも写りが好みですし、接写もしやすい。70〜200mmは表現のズレがなく、イメージしたものがそのまま撮れます。リリース当初は、いいレンズが発売されたと思いました。コンパクト性に惹かれましたし、収納するときは非常に入れやすく、機動性を優先しています。ポートレートから多くのスポーツにも対応し、長距離の暗いところでも撮影が可能です。ただ、一般の方であれば、70-200mmに関しては、F4でもいいのかもしれません。

    パリのカフェにて、70-200mmレンズで撮影

    50mmレンズはプライベートでも仕事でも使用。より感覚的に撮影ができる

    –RF50mm F1.8の用途は
     これは基本的に散歩用ですが、仕事でも使っています。50mmの場合、F1.2もありますが、当然値段は高くなりますし、重くなりますのでF1.8の方が気に入っています。単焦点はやはり感覚的に撮れるというメリットがあり、より表現しやすい、いわば作品に近い感覚になります。自らが動いて撮影する楽しさがあり、遊べる1本としては適していますし、仕事のポートレートでも活躍しています。

    –現在欲しいレンズはありますか
     以前からRF14-35mm F4 L IS USM(実勢価格約20万円)が気になっていて、つい最近購入しました。動画撮影にもいいのではないかと思います。今まで使っていたEF16-35mm F2.8L III(実勢価格約24万円)と比べても非常に満足しています。

    雑誌のインタビューにて、アーティストのSION氏を撮影

    –では、広角は必要でしょうか
     表現の幅を広げるという観点では持っておきたい1本です。建物やスポーツ会場などの建築物に対し、目で見える情景とは違う、ある意味“違和感”を出すことができます。肉眼にはない表現ができ、そこがおもしろさですね。

    –一般の方向けのおすすめのレンズは
     ボディとセットで付いている標準〜ズームレンズは使い勝手がいいと思いますが、個人的には単焦点レンズ、RF50mm F1.8を1本追加し、自ら絞り(F値)やシャッタースピードを設定して楽しんでもらいたいですね。まずは適正露出を理解するのが大事なので、最初こそISO感度はオートでいいと思いますが。また、広角が好みであれば、RF16mm F2.8を選択するのもいいかもしれません。こちらは5万円くらいで買えますし、非常にお得です。プロならすぐに投資回収できますね(笑)。

    –投資回収という考えになるのですね
     それはありますよね。このレンズは稼がなかったなぁとか(笑)。

    広角レンズを使い、パリの街角でのスナップ。カメラを地面に置いて撮影

    –単焦点レンズはそれだけ魅力があるわけですね
     単焦点レンズに限らずですが、絞りが自動で変わらないレンズを使ってほしいです。絶対そちらの方がカメラを理解できますし、デジタルなので失敗なんて実質ないも同然ですから、好きなだけシャッターを押せばいいんです。

    パリの街角スナップ。200mmレンズだからこそ撮れた1枚

    費用をかけるならボディよりもレンズ。一眼こそマニュアルで操作してほしい

    –一般の方だと子どもの運動会などもあり、そうしたケースは望遠レンズが必要になると思います
     多少の出費にはなりますが、EF70-200mm F4L USM(実勢価格6〜10万円)という選択肢もあります。EOS RPやR 10の場合ですと、マウントアダプターが必要になりますが。

    パラリンピックで3つの金メダルを獲得し、世界屈指の強さを誇る狩野亮選手。望遠レンズが不可欠なシチュエーション


    –レンズとボディ、どちらにお金をかけるべきでしょうか
     レンズだと思います。そもそも一般の方であれば、ボディの性能を極限まで引き出す、という機会は滅多になく、フルサイズなどの大きなセンサーも必要ないからです。それであれば、レンズの違いのおもしろさ、肉眼にはない世界を体験する方が、絶対カメラにハマるはずです。
     仮にEOS R6とレンズ1本を購入するなら、EOS RPとレンズ2本を購入する方がおすすめです。前回紹介したようにRPでも十分なクオリティがあります。マクロレンズなどから見える世界は、実際の目で追体験することは不可能。一般の方が普通にプロ機を使える時代になっていますが、写真を深く理解するには、ボディよりもレンズが重要です。

    –では、技術的なことをおうかがいしたいのですが、一般の方がポートレート撮影するとき、どうすれば上手く撮れるでしょうか
     プロ目線でいうと、根本的なポイントはコミュニケーションなのですが、街中のスナップだとそうはいかないですよね。であれば、とにかく「影を見る」ことでしょうか。ちょっとわかりづらいですかね? 太陽は背にした方が立体感が出るため、逆光で撮るといい。だからこそマニュアルで撮影してほしいわけです。シャッタースピード優先や絞り優先を使わずにマニュアルでやってほしい。これがコンデジだったらPモードとかになりがちですが、わざわざ一眼を使うわけですから、セッティングにはこだわってほしいですね。

    標準レンズで撮影したパリの夕暮れ。逆光撮影での模範的な1枚

    マニュアル操作が上手くなる最短ルート。ISO感度はオートでもよし

    –一般の方には少しハードルが高いような……
     Pモードをやり出すと、そのままずっとPモードに慣れてしまうんです。撮りたいテーマを決め、それに合わせて、シャッタースピード、絞りを変えて撮影することが大切。ISO感度の設定が難しければ、最初こそオートでも構いませんが、まずはシャッタースピード、絞りを理解することが、カメラが上手くなる一番の近道です。

    –なかなか厳しいですね(笑)
     ただ、そのポイントを理解しないと、結果的に10〜15万円という出費を無駄にしてしまうのではないかと思うわけです。一眼カメラを目指すなら、そこは乗り越えてほしいですね。あくまで一眼であって、コンデジではないので。アンダー気味が好きとか、オーバー気味が好きというのは個人の趣味であり、そうした表現を追求していくことが、カメラの楽しさの一つだと思っています。

    前回に引き続き、Canonの製品を語ってくれた依田さん( fwyxf366@gmail.com / instagram @ hiro_yoda )

    プロカメラマンが教える!ビギナー向け、おすすめのCanonミラーレス一眼