元カメラ開発者が解説。ストロボ撮影で得られる4つの効果
目次
動画について
最近ではデジカメの高感度耐性が進化したことで、ISO感度を上げてもノイズが乗りにくくなっているため、フラッシュを使う方は減っていますよね。
しかし、フラッシュの効果は暗い場所を照らすだけではありません。
暗い場所を照らす以外の使い方について詳しく説明しているのが、大人気YouTubeチャンネル「カメラ部TV」のこちらの動画。
フラッシュの基本効果を4つに分け、豊富な作例や比較を用いて紹介しています。
動画後半ではあまり解説されることのないフラッシュの仕組みについて解説。
元カメラ開発者だというダイさんの知識が光ります♪
動画紹介
YouTube Info
Swamper Rate
pro(専門)度 | ★★★★★ |
動画クオリティ | ★★★★☆ |
聞きやすさ | ★★★★☆ |
わかりやすさ | ★★★★★ |
作成日:2022.09.13
動画タイムライン
00:00
オープニング
【テーマ:フラッシュの使い方や仕組み】
・最近のデジカメは高感度になったため、フラッシュを使う機会が減った
・しかし、効果的な撮影方法があり、今回は使い方を中心に説明していく
00:29
【フラッシュの基本的な4つの効果】
・暗いときに被写体を照らすだけではない
【フラッシュの効果1:スローシンクロ】
・夜景をバックに写真を撮りたい場合、普通にフラッシュ撮影すると人物だけが写り、夜景が全く写っていないというのはよくある話
・夜景と人物を両方写すのが「スローシンクロ」
<失敗例>
露出モード:Pモード
内蔵フラッシュON
・ほぼザクしか見えていない
【スローシンクロのやり方】
・露出モード:マニュアル
・フラッシュは、まだOFF
・内蔵フラッシュは閉じた状態
・外付けフラッシュは電源OFF
・夜景に露出を合わせる
・絞り値が重要
・モデルにピントを合わせたときに夜景が好みのボケになるF値に設定
・シャッタースピードを確認
・手ブレしそうなら三脚に取り付ける、何かにカメラを置く、息を止めて頑張る
・フラッシュをON
・内蔵フラッシュならポップアップ
・外付けフラッシュなら電源ON(フラッシュモードはTTL)
・モデルにAFを合わせて撮影
<成功例>
・1/2秒
・ISO3200
・184mm
・F8
・夜景のボケを大きめにした
02:06
【フラッシュの効果2:日中シンクロ】
・逆光でモデルの顔が真っ暗
<失敗例:逆光写真>
・フクロウの顔が暗い
<失敗例:露出補正のみ>
・露出補正をプラスにすると背景が飛ぶ
【日中シンクロのやり方】
・露出モードは何でもOK
・とにかくフラッシュをON(フラッシュモードはTTL)
<成功例>
・青空もフクロウもきれいに写る
02:40
【フラッシュの効果3:キャッチライト】
・雑誌モデルの写真の黒目を見ると、光の点や輪が見える
・光の点=キャッチライト
・キャッチライトがないと生命感がなくなる
・キャッチライト用だけなら大きなフラッシュは必要ない
・自然光下で撮影する場合は、日中シンクロの要領でモデルの正面から照射すればよい
・内蔵フラッシュで十分
<作例比較>
・左:フラッシュなし
・1/200秒
・露出-2.0
・右:フラッシュあり
・1/100秒
・露出+1.7
・ISO400
・184mm
・F2.8
・明るい室内
・キャッチライトが入っている方がイキイキしている
【スタジオ撮影】
・スタジオのような室内の暗い環境では多灯がオススメ
・大きめのメインフラッシュをモデルの斜め上45度から照射する設定が基本
・キャッチライト用のフラッシュにディフューザーをつける
・ディフューザーはフラッシュ光を和らげるための発光部につける拡散板のこと
・トレーシングペーパーなどを少し円弧状にして取り付ければよい
・クリップを曲げて作れる
・露出モード:マニュアル
・シャッタースピード(SS):X同調速度以下に設定
・内蔵フラッシュや使用カメラに対応しているクリップオンフラッシュを使う場合は、自動的にX同調になる
・絞り値は好みのボケになるように設定
・シャッタースピード、絞り値は決定されているので、触れるのはISO感度、フラッシュの強度だけ
・フラッシュの強度調整は、メインとキャッチライト用のバランスをとる
・フラッシュのモードを両方ともマニュアルにすると強度調整できる
・調整幅に限りがあるので、ISO感度も触りながら、両方の出力を調整する
<作例比較>
・左:キャッチライトなし
・右:キャッチライトあり
・キャッチライトがある方がイキイキする
05:17
【フラッシュの効果4:先幕/後幕シンクロ】
・一般的なカメラの初期設定は「先幕シンクロ」になっている
<作例比較>
・左:先幕シンクロ
・右:後幕シンクロ
・3.2秒
・ISO200
・56mm
・F22
・動く被写体の後ろに移動残像を残したい場合は、後幕シンクロに設定する
・作例のような光源などの明るい被写体でないと、フラッシュとの輝度差がありすぎて思ったように写らない
【星景写真では後幕シンクロを使う?】
・星景写真でモデルを入れて撮影した場合、後幕シンクロを使うという記事を見る
・先幕、後幕どちらでもよい
<作例比較>
・左:先幕シンクロ
・右:後幕シンクロ
・30秒
・ISO400
・40mm
・F5.6
・暗闇で星を撮っている状況で、モデルが撮影位置に出たり入ったりしても写らない
・モデルのポージングをしっかりしたいなら、立ち位置とポージングを決めて先幕シンクロで撮影し、フラッシュが光ったあとに画面外に出てもらうこと
【その他フラッシュの効果的な使い方】
・モデルの髪の艶感を出すために、上部の少し後ろからフラッシュを追加する
・背景の影を消す
・雰囲気を出すために小さなフラッシュを追加する
・光と影を作り出せる
06:54
【フラッシュ技術の基本】
・フラッシュは、キセノン(Xe)管というキセノンガスを充填して電極を両端に電極がセットされたガラス管が光る
・電極の間に数百ボルトを印加して、キセノンガス中に放電して発光する
【キセノンガスを使う理由】
・希ガス
・発光効率が高い
・発光時間が短い
・発光色が太陽光に近い
・電圧を印加するだけでは放電しない
・発光のトリガーとして、キセノン管の横から高電圧を少し加えると放電する
【キセノン管を放電させる数百ボルトってどうやって作るの?】
・カメラや外付けフラッシュの電池は、6-7ボルト程度
・昇圧トランスで数百ボルトまで昇圧
・ただし、昇圧できてもパワーがない
・メインコンデンサー(主コン)と呼ばれる電解コンデンサーに電荷を蓄える=フラッシュを充電する
・フラッシュ充電中の音は、昇圧トランスのコイルが発振している音
・コンデンサーに電荷が十分に貯れば、シャッターに同期してトリガー用の電圧コイルに印加してキセノン管に放電するだけ
【フラッシュ内蔵カメラや外付けフラッシュを分解する必要があるときの注意】
・メインコンデンサーの電極には触らない
・感電する
・死ぬほどの電流はないものの、指先に小さな穴が開く
08:45
【ガイドナンバー】
・GNo.またはGNと書かれている数値
・ガイドナンバーはフラッシュ光によって適正露出になる「フラッシュマチック」というシステムで決定される
・ISO100のとき、距離m * FNo.=GN
・距離m=3m、FNo.=4のとき、GN=3*4=12
・フィルムカメラのときはフラッシュマチックで露出を決めていた
・ISO100のフィルムにGN=20の外付けフラッシュを取り付けたとする
・ピントを合わせたときの距離環の指標から被写体までの距離を読み取る
・読み取った距離=3.5mのとき、3.5m/GN20=5.71なので、FNo.5.6で適正露出になる
・ISO400のフィルムにGN=20のとき、2段感度が高いのでFNo.5.6を2段絞りF11にする
・最近のカメラはTTL(Through The Lens)制御だが、フラッシュマチックのほうが正しく適正露出を導ける
10:18
【なぜ今のカメラはフラッシュマチックを採用しない?】
・AFのピントは確実に合うが、絶対距離=実距離は大体しかわからない
【シャッターによる発光タイミングの違い】
・レンズシャッターをもつコンパクトカメラと、フォーカルプレーンシャッターをもつ一眼レフカメラでフラッシュが光るタイミングが異なる
・一眼レフカメラに搭載しているフォーカルプレーンシャッターは全開になるX同調速度以下でないとフラッシュが焚けない
・コンパクトカメラ搭載のレンズシャッターは、全てのシャッタースピードで対応可
・レンズの虹彩絞り位置にシャッターがあるから
・レンズの絞り位置は、どの絞り値でも像面の全てに光が入る位置(画面の端に届く光束と中心の届く光束が交錯する点)
・被写体に照射したい場合は、どのシャッタースピードでも画面全体に光が行き届く
【レンズシャッターとフォーカルプレーンシャッター:フラッシュ撮影時の違い】
・レンズシャッター:最高速1/2000秒
・フラッシュ同調速度:1/2000秒
・一眼レフカメラのX同調速度より遥かに早くフラッシュが焚けるメリットがある
・ライカには、そのためだけのレンズシャッターを搭載した交換レンズを製品化している
・フォーカルプレーンシャッター:最高速1/8000秒
・フラッシュ同調速度:1/250秒
11:47
まとめ
・カメラメーカーでは、フラッシュ開発者はフラッシュの開発だけをしていた
・最近ではデジカメの感度が向上し、フラッシュの需要は減っている
・自社開発では元が取れないため、OEM生産が増えている
・フラッシュもカメラ本体と同様に歴史があるため、カメラメーカーごとに独自の進化をしている
・リモートフラッシュは各社システムが異なるため、メーカーをまたいで共有することが難しい
・各メーカーの独自性を考えるとCIPAで統一も難しい