FUJIFILM GFX100Sの開発秘話。ノスタルジックネガのカラー設定も公開!
目次
動画について
富士フィルム公式YouTubeチャンネルにて、FUJIFILM GFX100Sの開発秘話が公開!
商品企画の方を交え、外装設計・画質設計・手ブレ補正の開発担当者3名が、開発時にこだわったことや苦労したことなどを赤裸々に語っています。
また、動画の最後には画質設計担当者が考えたオススメのノスタルジックネガ用設定を大公開!
70年代のアメリカンニューカラーにより近づけて撮影できるそうです。
ぜひ設定を覚えてレトロな作品を撮ってみてください♪
Swamper Rate
pro(専門)度 | ★★★★★ |
動画クオリティ | ★★★☆☆ |
聞きやすさ | ★★★★☆ |
わかりやすさ | ★★★★★ |
作成日:2023.01.07
動画タイムライン
00:00
オープニング
今回のテーマは「FUJIFILM GFX100S」
2021年2月下旬発売
商品企画:上野隆
外装設計:高木正彰
画質設計:西尾祐也
手ブレ補正:石田一樹
00:37
◆FUJIFILM GFX100S
1億200万画素のラージフォーマットセンサー(FUJIFILM GFX100より引き継いだ)
小型軽量化と機動性を実現した中判ミラーレスデジタルカメラ
質量900g(FUJIFILM GFX100から500gカット)
5軸・最大6.0段の手ブレ補正を搭載
◆FUJIFILM GFX100
2019年発売
1億200万画素のラージフォーマットセンサー搭載
卓越した解像度・階調・立体感を実現
質量1400g(EVF装着時)
FUJIFILM GFX100Sは、FUJIFILM GFX100の兄弟機(後継機ではない)
FUJIFILM GFX100でも画質に高い評価をいただいた
富士フィルムとしてはFUJIFILM GFX100でも小さく、低価格にした自負はある
→お客様からより小型軽量で低価格という強い要望をいただいた
◆FUJIFILM GFX100S
FUJIFILM GFX100の1億200万画素ラージフォーマットセンサーをそのままに小型軽量化
従来の中判カメラのイメージを覆す機動性を実現
02:17
◆GFX100S 小型軽量化への道のり
高木さんはFUJIFILM GFX100も担当
Q:デザイナーを含めて商品企画から「このサイズでやってくれ」と
リクエストを受け取って最初どう思った?
FUJIFILM GFX100を出したときに1億画素を注目していたと思うが、画素数が大きいだけではない空気感などのメリットがあると市場の声を聞きながら感じていた
◆外装・高木さんのこだわり
FUJIFILM GFX100の美しい画質を手軽に体験できるサイズ・重量を目指した
03:25
商品企画もFUJIFILM GFX100をやるときは、
・ターゲットサイズ・重量は他社のフラグシップ一眼レフと同等
・プロ用途も意識
・縦位置バッテリーグリップ一体型でバッテリーが最初から2個入る
・最初からカタログスペックで800枚電池交換無しで撮れる
というスペックを目指した
◆FUJIFILM GFX100S
1億200万画素のラージフォーマットセンサーと高速画像処理エンジン「X-Processor4」を搭載
質量900gの小型軽量化を実現
フルサイズミラーレスに対抗するものをラージフォーマットで作ろうと思った
→質量900gでかなりいい線まで近づけて、実用上は遜色ない小型軽量化を実現できた
04:18
◆GFX100S 小型軽量化 レイアウトの工夫
Q:小型軽量を実現する一番のポイントや頑張ったところは?
レイアウトをいくつか工夫できたところがある
FUJIFILM GFX50Sは、ほぼカメラの筐体の中でシャッターが大部分の面積を占めていた
▼
FUJIFILM GFX100Sについてはシャッターの面積が縮小し、
バッテリーの配置をシャッターの隣に縦置きできるようになった
◆外装・高木さんのこだわり
コンマ単位でバッテリーの位置を調整
バッテリーは7.5°斜めに入っている
コンマ5°単位でシュミレーションして、一番最適なサイズになるのはどこかを探し求めた
◆NP-W235
2020年発売「FUJIFILM X-T4」で初めて採用したバッテリー
バッテリーはくぼみを使って幅を抑えている
バッテリーを作るとき、くぼみを作るか作らないかで議論したことがあった
「フラットでもいいんじゃない?」→「削っておくと将来役に立つかもしれない」
▼
今回バッテリーの山の削りがすごく役に立った
06:09
◆コマンドダイヤルの操作性
富士フィルムのコマンドダイヤルは、
プッシュして機能を切り替えるとか一発で拡大するとか、多機能を求めていた
→その分回転フィールが曖昧になっているという評価を頂いていた
▼
FUJIFILM GFX100Sではプッシュ機能をそのままに節度感を上げていると思う
◆外装・高木さんのこだわり
コマンドダイヤルの構造を刷新
・プッシュのストロークの長さ
・ストロークの荷重
・最後押し切るところのスイッチのデバイス
◆比較写真
上)FUJIFILM GFX100
下)FUJIFILM GFX100S
そこの位置にダイヤルを置くというのは、
今までの機種だと外径(ダイヤルの直径)が小さかった
プッシュもするから奥行きが必要だった
▼
FUJIFILM GFX100Sでは、径を大きくして操作感のアップにこだわって進めてきた
皆で毎週のように触って、
「まだちょっと擦れ音がするよね」「ふにゃふにゃするよね」
と言いながらブラッシュアップしていった
07:35
◆フォーカスレバー
◆比較写真
左)FUJIFILM GFX100
右)FUJIFILM GFX100S
フォーカスレバーの形状を初めて変えた
FUJIFILM GFX100はスティックを倒して操作する意識でやっていた
→FUJIFILM GFX100Sでは面で操作するようにした
◆外装・高木さんのこだわり
フォーカスレバーのデバイスも刷新
動かし方と、それに対するフォーカスポイントの移動の反応速度・追従性にこだわった
08:14
◆GFX100S シャッターの小型軽量化
◆フォーカルプレーンシャッター
イメージセンサーの直前にある機械式シャッター
GFXシリーズでは世界初ラージフォーマットミラーレス専用シャッターとして開発
フォーカルプレーンシャッターのグレードが大きいというのは商品企画も痛感していた
Q:フォーカルプレーンシャッターはどのくらい小さくなった?
A:20%近く表面積で小さくなっている
Q:小さくできたポイントは?
◆手ブレ補正・石田さんのこだわり
モーターを減らして20%小型化を実現
2つのモーターで実現していた制御の機能があったのを1つのモーターで実現できた
→モーターをなくせるようになったことで、大幅なレイアウトの見直しが行えた
→バッテリーを横に入れられるような構造を実現できた
◆手ブレ補正・石田さんのこだわり
小型化に合わせて制御方法と内部の構造を見直した
Q:性能的に失うものなく20%の小型化を実現した?
連射速度や耐久の性能は変わっていない
→制御の仕方や他の構造の設計を変えたりとかして実現した
09:40
◆GFX100Sの手ブレ補正
Q:フォーカルプレーンシャッターだけでなく手ブレ補正もくるが
スペースを詰めることによって、
手ブレ補正のユニットに対する負荷はどうしても大きくなってしまう
◆手ブレ補正・石田さんのこだわり
配線の引き出し方向を分散し薄型化と性能を両立
◆富士フィルムで手ブレ補正を積んだ機種
・FUJIFILM X-H1
・FUJIFILM GFX100
・FUJIFILM X-T4
・FUJIFILM X-S10
・FUJIFILM GFX100S
手ブレ補正ユニットは機種に合わせて毎回開発している
富士フィルムは手ブレ補正は「要ります?」くらいな感じだった
手ブレ補正は確かに手ブレは抑えてくれるが、
相手が動いていると被写体ブレには影響しない
→万能ではないから全てのカメラに載せようと思っていない
▼
FUJIFILM GFX100Sの用途を考えるとあったほうが良いと思った
Q:小型化できただけでなく補正段数も上がっている?
◆FUJIFILM GFX100S
5軸最大6.0段の手ブレ補正搭載
FUJIFILM GFX100よりも0.5段向上
◆手ブレ補正・石田さんのこだわり
シャッターの振動が伝わらないよう、やさしく保持する構造を設計
軽量化することで同じパワーでも揺れやすくなってしまう
▼
なるべくジャイロセンサーに対して振動が伝わらないような構造設計をした
試作機を預かって厳しい条件で撮ったが、
1億画素が手持ちで1/20秒の低速シャッターでもピタッと止まると感動する
12:12
◆GFX100Sの画質設計
富士フィルムの根幹は色再現・階調再現・ダイナミックレンジなど含めた画質
◆ノスタルジックネガ
FUJIFILM GFX100Sで新たに加わったフィルムシュミレーション
最初にノスタルジックネガのようなフィルムシュミレーションがほしいと言ったのは、
3年近く前だった
X-Pro3(2019年発売)をやろうとなったときに、
「Xにはこういう色再現がまだないんじゃないですか」というところで提案した
◆ニュー・カラー
1970年代、それまでモノクロ写真が主流だった芸術写真の世界に、
アメリカの写真家たちがカラー表現の可能性を提起したムーブメント
アメリカの原風景を切り取ったような、世界でも人気の色再現
◆ノスタルジックネガの開発
営業の方から1冊だけ写真集を渡されて、
「こんな画がほしい」という雑なオーダーからスタートした
◆画質設計・西尾さんのこだわり
ニュー・カラーの研究のため、70年代の写真集を集めた
1冊だと当時の写真の特徴や全体像が見えてこなかった
→神保町に行った
どうしても廃盤になっている写真集が多いので、
70年代の写真が中心になっている古本を集めた
再販すると現代の印刷方法になってしまう
→色が微妙に違う
14:10
◆一番難しかったこと
写真集の共通項を見つけるのが非常に難しい
写真集によって画がバラバラだし、写真家の作風がさまざま
→どういった共通項があるから未だに人々を魅了するのか、を突き詰めていくのが難しかった
人々が思い描く「ニュー・カラー」の共通項を見つけることに苦労した
15:10
◆ノスタルジックネガの特徴
Q:クラシックネガやプロネガもあるが、一番の違いは?
◆ポイント1◆
暗部の発色が良い
写真集を分析して暗い部分の発色がよかった
◆ポイント2◆
アンバーが基調
※アンバー
琥珀のような黄色みを帯びた温かい色合い
アンバー・クール・ブルートーンはどちらかというとホワイトバランスの世界
→ホワイトバランスがどうであれ色再現の方でのアンバー調を出している
16:10
◆ホワイトバランスとの関係性
Q:WBの組み合わせは難しいと感じるが?
グレーを合わせてもアンバーの雰囲気がある
アンバーを前提として色再現を1から作っているので、全体として画は自然に仕上がる
Q:オススメのホワイトバランスはオート?
A:そうですね
今回作ったノスタルジックネガは、
どんなシーンを撮っても写真集のようになるかと言われたら、そうではない
今回作ったものは何でもニュー・カラーフィルターと言われれば、そうではない
→あくまで写真集のエッセンスを入れたもの
◆フィルムシュミレーションはカラーエフェクトではなく画質設計
感度が変わったとき、ホワイトバランスが変わったとき、
富士フィルムが認めたトーンや階調になるように設計したのがフィルムシュミレーション
17:42
開発するにあたったすごくフィールドテストをした
実機が来る前は、スナップだけど中判なのでハンドリングが大変そうなイメージでいた
実際持ち出してみて軽快に楽しんで撮れている自分がいて感謝している
▼
FUJIFILM GFX100Sだからこそ撮れる画がある
外装設計含め頑張って900gの小型軽量だが、
撮れる画はフィルムでいうと8×10クラスだと思っている
▼
FUJIFILM GFX100Sは富士フィルムのイノベーションの結集体
昔の4×5や8×10のように必ず三脚を据えて1日に数枚しか撮れませんではおもしろくない
手軽にスナップに使えてしまうという富士フィルムが提案する新しい写真の世界
=FUJIFILM GFX100Sだと思う
フルサイズを超える世界を体感してほしい
19:04
◆ノスタルジックネガらしさがでる西尾さんのおすすめ設定
【メニュー→I.Q.】
ホワイトバランスAUTO
WBシフト R:+2 B+-3
トーンカーブ シャドウ:-2
カラー:-2
アンバー味を足せる
Q:なぜそれをデフォルトにしなかった?
A:フィルムシュミレーションとしては、どんなシーンでもというのがある
この設定は「ドンピシャに当たったときは一番いいけど」という設定
→使うポイントは選ぶかもしれない
70年代の写真の雰囲気が出しやすいと思う